Japanese translation of The Question Concerning Technology in China (Genron, 2022)

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The Japanese translation of The Question Concerning Technology in China (中国における技術への問い 宇宙技芸試論) (Genron, 2022) will be published in August. The book can be ordered on Genron’s webstore.


『中国における技術への問い 宇宙技芸試論』ユク・ホイ著 伊勢康平訳

ゲンロン叢書012
ソフトカバー・四六判 本体464頁 2022年8月発行 ISBN:978-4-907188-46-7


 

なぜ「技術」は西洋の伝統のうえでのみ定義され、論じられてきたのか?

 

ハイデガーの「技術への問い」を乗り越え、破局へと暴走するテクノロジーに対抗するために、香港の若き俊英は文化的多様性に開かれた「宇宙技芸」の再発明に挑む。京都学派から100年。「近代の超克」を反省し、東洋思想を再び世界へと開くために必要な、「道」と「器」の再縫合はどうなされるべきなのか。諸子百家と人新世を結ぶ、まったく新たな技術哲学の誕生!

ユク・ホイ
香港出身の哲学者。「哲学と技術のリサーチネットワーク」主宰。ロイファナ大学リューネブルク校でハビリタツィオン(教授資格)を所得。現在、中国美術学院および香港城市大学創意媒体学院にて教鞭を執る。編著書に『30年後の「非物質」展──アート・サイエンス・セオリー』(メゾン・プレス、2015年、共編)、『デジタルオブジェクトの存在について』(ミネソタ大学出版社、2016年)、『中国における技術への問い──宇宙技芸試論』(アーバノミック、2016年)、『再帰性と偶然性』(ローマン&リトルフィールド・インターナショナル、2019年)。『中国における技術への問い』の序論は日本語に翻訳され、『ゲンロン7』から『ゲンロン9』に掲載された。また、『ゲンロン10』から「芸術と宇宙技芸」を連載中。

伊勢康平(いせ・こうへい)
1995年京都生まれ。東京大学大学院人文社会系研究科博士課程在籍。専門は中国近現代の思想など。翻訳に王暁明「ふたつの『改革』とその文化的含意」(『現代中国』2019年号所収)、ユク・ホイ「百年の危機」(「ウェブゲンロン」、2020年)、「21世紀のサイバネティクス」(「哲学と技術のリサーチネットワーク」、2020年)ほか。


【目次】

日本語版へのまえがき
まえがき
年表 本書に登場する東西の思想家

序論
1 プロメテウスの生成
2 宇宙・宇宙論・宇宙技芸
3 テクノロジーによる断絶と形而上学的統一
4 近代性・近代化・技術性
5 何のための「存在論的転回」か?
6 方法にかんする諸注意

第1部 中国における技術の思想を求めて
7 道と宇宙──道徳の原理
8 暴力としてのテクネー
9 調和と天
10 道と器 自由と対する徳
10・1 道家における器と道──庖丁の牛刀
10・2 儒家における器と道──礼の復興
10・3 ストア派と道家の宇宙技芸にかんする見解
11 抵抗としての器道──唐代の古文運動
12 初期の宋明理学における気の唯物的理論
13 明の宋応星の百科事典における器道
14 章学誠と道の歴史的対象化
15 アヘン戦争後に起きた器と道の断絶
16 器道の関係の崩壊
16・1 張君勱──科学と人生観の問題
16・2 中国本位的文化建設宣言とその批判
17 ニーダムの問い
17・1 有機的な思想の形態と自然法
18 牟宗三の応答
18・1 牟宗三によるカントの知的直観の独自解釈
18・1 牟宗三による良知の自己否定
19 自然弁証法と形而上学の終わり

第2部 テクノロジーへの意識と近代性
20 幾何学と時間
20・1 古代中国には幾何学がなかった
20・2 幾何学化と時間化
20・3 幾何学と宇宙論的特殊性
21 テクノロジーへの意識と近代性
22 近代の記憶
23 ニヒリズムと近代
24 近代の超克
25 ポストモダンの想起
26 故郷回帰のジレンマ
27 人新世における中華未来主義
28 もうひとつの世界史のために

解説 「宇宙技芸」の再発明 中島隆博
訳者あとがき
索引

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Review of The Question Concerning Technology in China (Genron, 2022) in Artscape (JP)

昨年、哲学者ユク・ホイの主著2冊が立て続けに日本語に翻訳された。その1冊が『再帰性と偶然性』(原島大輔訳、青土社)であり、もう1冊が本書『中国における技術への問い』(伊勢康平訳、ゲンロン)である。かれのおもな専門は技術哲学だが、過去には哲学者ジャン=フランソワ・リオタールが手がけた展覧会「非物質的なものたち」(1985)についての論文集の編者を務めるなど★1、現代美術にも造詣が深いことで知られる。 本書『中国における技術への問い』は、近年まれにみるスケールの哲学書である。著者ユク・ホイは香港でエンジニアリングを、イギリスで哲学を学び、ドイツで教授資格(ハビリタツィオン)を取得したという経歴の持ち主だが(現在は香港城市大学教授)、本書を一読してみればわかるように、そこでは英語、中国語はもちろん、ドイツ語やフランス語の文献までもが幅広く渉猟されている。そのうえで本書が投げかけるのは──まさしく表題にあるように──「中国」における「技術」とは何であるか、という問いである。 そもそもこの「技術への問い(The Question Concerning Technology)」という表現は、ハイデガーによる有名な1953年の講演(の英題)から取られている(『技術への問い』関口浩訳、平凡社ライブラリー、2013)。本書は、かつてハイデガーが西洋哲学全体を視野に収めつつ提起した「技術への問い」を、中国哲学に対して差しむけようとするものである。せっかちな読者のために要点だけをのべておくと、本書でホイがとりわけ重視するのは「道」と「器」という二つのカテゴリーである。大雑把に言えば、中国哲学においては前者の「道」が宇宙論を、後者の「器」が技術論を構成するものであり、ホイはこれら二つの概念を軸に、みずからが「宇宙技芸」と呼ぶものの内実を論じていくことになる。言うなればこれは、古代ギリシアにおける「テクネー」を端緒とする西洋的な「テクノロジー」とは異なる、中国的な「技術」の特異性を明らかにする試みである。 Read more

The Question Concerning Technology in China (Genron, 2022) is ranked no. 10 the Kinokuniya Humanities Award 2023 (「紀伊國屋じんぶん大賞2023」) (JP)

たくさんのご応募、誠にありがとうございました。 「紀伊國屋じんぶん大賞2023 読者と選ぶ人文書ベスト30」が決定いたしました! 「読者の皆さまと共に優れた人文書を紹介し、魅力ある『書店空間』を作っていきたい」――との思いから立ち上げた「紀伊國屋じんぶん大賞」は、今年で13回目を迎えました。 おかげさまで、本年もたくさんのご応募と推薦コメントをお寄せいただきました。一般読者の方々からいただいたアンケートを元に、出版社、紀伊國屋書店社員による推薦を加味して事務局にて集計し、ベスト30を選定いたしました。 ※2021年11月以降に刊行された人文書を対象とし、2022年11月1日~11月30日の期間に読者の皆さまからアンケートを募りました。※当企画における「人文書」とは、「哲学・思想、心理、宗教、歴史、社会、教育学、批評・評論」のジャンルに該当する書籍(文庫・新書も可)としております。 2023年2月1日(水)より全国の紀伊國屋書店で受賞作を集めたブックフェア・推薦コメントを掲載した小冊子の無料配布を予定しております。※フェアの展開規模は店舗によって異なります。詳細が決定しましたら随時このページや公式Twitterにてお知らせいたします。   出版社内容情報 諸子百家と人新世を結ぶ、まったく新たな技術哲学の誕生! なぜ「技術」は西洋の伝統のうえでのみ定義され、論じられてきたのか? ハイデガーの「技術への問い」を乗り越え、破局へと暴走するテクノロジーに対抗するために、香港の若き俊英は文化的多様性に開かれた「宇宙技芸」の再発明に挑む。京都学派から100年。「近代の超克」を反省し、東洋思想を再び世界へと開くために必要な、「道」と「器」の再縫合はどうなされるべきなのか。諸子百家と人新世を結ぶ、まったく新たな技術哲学の誕生! more info